大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)165号 判決

事実及び理由

原告の請求の原因及び主張のうち一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

そこで、審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて考える。

成立について争いのない甲第六号証の四によれば、本願考案の明細書の特許請求の範囲は、事実摘示第二、二記載のとおりであると認められるところ、右記載によれば、本願考案に係る丸鋸切断機は、「上部を移動基台(4)におおわれて該移動基台(4)の下面に固設されたモータ」を具備していることをその構成要件の一つとしているものであると認められる。

ところで、第一引用例(成立について争いのない甲第八号証)においては、モータ(11)は本願考案の移動基台(4)に相当する追従手段(16)(審決―成立について争いのない甲第一号証―では移動基台に相当するものは番号15で示されたものであるといつているが、第一引用例によれば、移動基台に相当するものは番号16で示された追従手段であつて、番号15は追従手段(16)と水平軸(17)を含む案内手段であると認められる。)によつてその上部をおおわれてはおらず、且つ、被告が自認するごとく、モータは追従手段の下面に固設されてはいないから、本願考案と第一引用例においてはその点にも構成上の差異があるものというべきである。

しかるに、審決は、第一引用例のものが「移動基台の下部に設けられたモータ」を具備している点において本願考案と同一であると判断しており、右判断は前記の理由により誤つている。

被告は、第一引用例において、モータは屋根形の追従手段の下方で、しかも鋸歯(10)の真下の位置から偏倚して取付けられているから、その偏倚により切粉から回避され、更に追従手段により防護されるところ、一般に工作機械などで駆動源、動力伝達系などを切粉から防護することは、当業者にとつて常識的な考慮事項であり、移動基台とモータの位置関係を本願考案のようにすることは第一引用例から当業者がきわめて容易に考え得ることである旨主張する。

しかしながら、モータなどの駆動源を切粉から防護することが当業者にとつて常識的な考慮事項であるとしても、モータなどをいかなる構成によつて切粉から護るかという点については種々の方法があり得、その点について考案が成立し得るものであることは、いうまでもなく、第一引用例のものが被告主張のような構成をとることにより、モータを切粉から防護するような考慮を払つているとしても、なぜ第一引用例のものから、構成の異なる本願考案にきわめて容易に想到し得るのかということについては、被告は何も主張せず、且つ立証もしていない。被告の主張は、要するに、効果が同様ならば、その効果を生ずる構成は、他の構成のものから容易に想到し得るということに帰し、その採るを得ないことは明らかである。

右のとおりであつて、審決は本願考案と第一引用例における相違点を看過し、その相違点があるにかかわらずなお本願考案に進歩性があるか否かについての判断を遺脱したものであつて、その点において違法であるというべきである。

よつて、他の点についての判断を省略し、審決を違法としてその取消しを求める原告の請求を認容する。

〔編註その一〕本願考案の要旨は左のとおりである。

上部に被切断材の載置台(1′)を備えた機枠(1)と、この機枠(1)の中間高さ位置にほぼ水平な面内で横に並べて互に平行に設けられた一対の水平軸(2)、(2)と、前記一対の水平軸(2)、(2)にそれらの水平軸(2)、(2)の軸方向に移動自在にボールスライドベアリング(3)を介して架設された移動基台(4)と、上端部に設けられた軸受(17)を載置台(1′)よりも下方に位置させて前記移動基台(4)に立設された支持架(16)と、軸方向を前記水平軸(2)、(2)の軸線方向に上から見て直交させて前記軸受(17)に支承された回転軸(6)と、上部を前記移動基台(4)におおわれて該移動基台(4)の下面に固設されたモータ(5)と、上半部を前記載置台(1′)の上面に突出させて前記回転軸(6)の一端に固着された鋸刃(7)と、前記回転軸(6)の他端に載置台(1′)よりも下方に位置させて止着された従動プーリ(19)と前記モータ(5)のモータ軸(5′)に止着された、前記従動プーリ(19)より大径の駆動プーリ(18)との間に張設された伝動ベルト(10)と、自由端を機枠(1)の外に露出させて支持架(16)に取付けられた作動杆(8)とを具備したことを特徴とする丸鋸切断機(別紙第一図面参照)。

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

別紙第一図面

<省略>

<省略>

(以下省略)

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